7.「翻訳」型の勉強より「通訳」型の勉強を
英語を日本語に訳すという作業は、昔から日本の学校教育の中で行われてきました。ちょっと難しい英語を日本語に訳すことができると、英語が完全に理解できたような気になり、満足もしたものです。現在の学校でも、日本語訳は行われています。そして、生徒たちは日本語訳がわかると安心してしまいます。例えそれが自分で訳したものでなくても、日本語訳は大きな安心材料なのです。
それでは、次の英語を日本語に訳してみてください。
"Have you ever seen the man who was standing right in front of the
school gate?"
関係代名詞も使われているし、どの部分がどの単語を説明しているのか、ぱっと見るとすぐには理解できないかも知れませんね。それでは、日本語にしやすいように、英文に役割に応じた色づけをしてみましょう。
"Have you ever seen the man who was standing right in front of the school gate?"
これで日本語に訳しやすくなりました。赤い部分が青い部分を説明していることがわかったからですね。そこで、「翻訳」型の日本語訳と「通訳」型の日本語訳の両方を載せてみましょう。
「翻訳」型⇒あなたは今まで正門のすぐ前に立っていた男を見たことがありますか。
「通訳」型⇒見たことある?/男を/(その男は)立っていた/すぐ前に/正門の
何だか「通訳」型は格好が悪く感じるかも知れませんが、英語の語順をそのまま大切にした意味の取り方なので、英語学習にはこちらの方が効果があります。基本的に、「翻訳」というのは、一つの立派な技術なのです。だから、それができるようになるためには、それなりの訓練が必要だということになります。「うまく日本語に訳せない」と悩んでいる人の多くは、いきなりその難しい翻訳に挑戦しているからでしょう。例えば、次の英語を日本語に翻訳して見てください。
"What brought you here to Japan?"
翻訳A⇒何があなたをここ日本にもたらしましたか。
翻訳B⇒何があなたをここ日本に連れてきましたか。
翻訳C⇒どういういきさつでここ日本に来たのですか。
翻訳D⇒なぜここ日本に来たのですか。
翻訳E⇒この日本に来た理由は何ですか。
AとBが「直訳」(文字通りに日本語に訳したもの)でCからEまでが「意訳」(意味を理解して自然な日本語に訳したもの)です。このように、日本語に翻訳する作業は幅が広く、容易ではありません。でも、確かに楽しい作業でもあります。映画の字幕などは、まさにこの「意訳」を上手に使っていることになりますね。「意訳」というより「飛躍」と呼んだ方がいいかも知れません。実際の台詞とはかけ離れている場合がありますから。でも、映画の雰囲気を上手に伝えるためには、そのような技術が必要なのです。
さて、話題を最初に戻しましょう。要するに、英語を普通に学習するときには、「通訳」型の意味の取り方をして、内容が理解できたらそれで良しとすることが大切です。そして、内容が理解できたら、すらすら言えるまで徹底的に練習する。大切なのはきれいな日本語に訳す作業ではなく、英語をしゃべることですから、その辺を勘違いしてしまうと、英語の勉強は難しいものになってしまいます。最後にもう一つだけ例を挙げておきましょう。よく使われる英語の決まり文句です。
"It's as easy as eating a piece of cake."
「通訳」型で日本語にしてみましょう。
「通訳」型⇒それは/同じくらい簡単/食べることと/一切れのケーキを
つまり「そんなの超簡単だよ」「ちょろいぜ」という英語で、実際には"Piece of cake."と略されます。「通訳」型で英文の内容を理解することができたら、あとは何度も繰り返し発音の練習をすればいいのです。それこそ、「超簡単」ですよ。(2013年3月2日)
8.海外で暮らすチャンスがあるのなら
僕は、自分自身に海外で暮らした経験がありません。それでも、国内での勉強に工夫さえすれば、英語をペラペラ話しすらすら書けるようになると信じてはいます。でも、国内でできることにはやはり限度があるのも事実。例えば、テレビで海外ドラマなどを見ていても、登場人物が話す英語を聞いて、日本語を聞くときのような感覚で理解するのは至難の業です。ジョークなどは全く理解できないし、言葉のニュアンスとか言葉に込められた感情などを理解することも十分にはできません。
ですから、国内でしっかり勉強した上で、海外で暮らすチャンスがあるのなら、積極的に利用すべきだと思います。僕はもう55歳ですが、もしチャンスがあるのなら60歳の定年を迎えた後でもいいから、近場のハワイとかグアムに住んで、生きた英語の中で暮らしてみたいと思っています。もちろん、アメリカ本土のニューヨークなどで生活できるのなら、それは大歓迎ですが。また、アメリカではなくても英語を母国語としているカナダなどで暮らすのもいいかも知れません。カナダには知人のインド人夫婦が住んでいます。ご主人はコンピューターエンジニアで奥さんはお医者さんという、大変優秀なご夫婦です。義父母の紹介で知り合い、茅ヶ崎にも何度か遊びに来てくれました。「いつかカナダに来て下さいね」と言ってもらって、もう何年も過ぎていますから、サプライズでカナダ移住というのもいいかも知れませんね。カナダなら、愛犬も一緒に連れて行って、大自然の中で余生を送らせてあげるというのもGreat idea!だとは思いませんか。
以前、藤沢の英会話学校で英会話講師として働いていたとき、帰国子女の子供たちの英検対策を担当したことがありました。よく言われるように、文法の知識は確かではありませんでしたが、言葉を感覚で身につけている。しかも、口をついて出てくる英語を聞けば、もううっとりしてしまいます。完全なnative Englishなのです。いくら勉強したって、ああはなれない。僕は国内だけで勉強している日本人としては驚くほど発音がいい方ですが、彼らにはとてもとてもかないません。僕の発音は、英和辞典の「発音記号」で覚えたものです。だから、ものすごく正確なのですが、自然のくずれが少ない。言葉はきちんと正確に発音されるものではありません。自然にくずれていて初めて聞き取ってもらえるのです。
最近では帰国子女の歌手やアナウンサーがよくテレビ画面に登場します。しゃべる英語を聞くと、本当にうらやましい。だから、みなさんにもぜひ海外で暮らす経験を積んで欲しいのです。年齢はさほど関係ないのではないでしょうか。例えば、僕が60歳を過ぎてからアメリカに渡って、そこで生活を始めたとしても、日本国内での学習経験とアメリカ生活への意欲がありますから、ほんの数年でnative Englishをマスターしてしまう自信はあります。言葉はやはり「慣れ」ですからね。
僕は、テレビドラマのHawaii Five-Oが大好きです。ストーリーも好きですが、ドラマが進行するあのハワイの雰囲気が好きなのです。真っ白な砂浜を散歩もしてみたいし、ハワイに住んでいる日系アメリカ人も含めた多くの人々と親しくなりたいと思います。日本国内だと、あまり積極的に交友関係を築こうとしない僕ですが、なぜか海外に出るとまったく違った性格になってしまいます。だから、きっとハワイでもたくさんの友人を作ることができると思うんですね。以前、昔の教え子がアメリカ人と結婚してハワイに住んでいたこともありました。僕は、彼女からもらったあるメールの文を今でもはっきりと覚えています。「今日は何もやることがなかったので、仕方がないから娘たちとワイキキビーチを散歩してきました」びっくりしたでしょう?僕たち日本人にしてみたら、ワイキキビーチを散歩するなんて夢みたいな話ではありませんか。でも、ハワイに住んでいる彼女にしてみれば、ただの日常生活の一部なわけですね。そのさりげない格好良さがうらやましく思えました。
というわけで、皆さんもぜひ海外暮らしを経験して下さい。「年齢は関係ない」とは言ったものの、若いうちに経験できればそれに越したことはありません。吸収するものが圧倒的に多いはずですから。僕は、次の人生に賭けるかな。(2013年8月17日)
9.粘り強く音読練習を続けることが進歩への近道
僕が教えている中学1年生には、家で繰り返し音読の練習をすることが、英語上達の一番の近道だと教えてきました。ところが、最近いくつかのクラスで、「家で音読練習をしっかり続けている子は?」と訊くと、手を挙げたのはほんの数名だったのです。これでは英語が得意になるわけはありません。教科書の本文を声に出して読むことなど、ほんの少しの努力すればできること。その「ほんの少し」がやがては大きな成果となって現れるというのに、どうして今の子供たちは楽をしたがるのでしょうね。アドバイスの仕方に問題があるのでしょうか。それとも、子供たちの意欲が足りないのでしょうか。
僕が中学生の頃は、勉強の仕方は自分で考えていました。1年生の時に成績不振から抜け出すことに成功した(塾の先生のお陰なんですが)英語は、他の誰もやらないような方法を自分で考えて実行していました。夜はLPレコードをかけてビージーズとかカーペンターズなどの英語の歌を聴きまくる。何度も何度も繰り返して聴いて、そらんじてしまうのです。教科書の本文は塾の先生が徹底的に暗記させてくれました。このときの恩師の指導が今の僕を作ったと言っても言い過ぎではありません。中学2年生の時、「小さな恋のメロディ(Melody)」という映画がイギリスからやって来て、僕は友だちと一緒に4回も観に行きました(大学生になってからも4回行っているので、合計8回になります)。そして、その映画の台本とカセットテープをどこからか手に入れてきて、夜はそれを聴きながら台詞を覚えようとしたのです。映画の台詞を覚えようとする中学生などまずいませんね。ですから、先生の指導の仕方がどうのというよりも、自分の気持ち次第で勉強はいくらでもできるということです。
教科書の本文を音読するような勉強は、習慣になってしまえば、そんなに苦にはならないでしょう。最初は面倒に感じるかも知れませんが、習慣化すれば歯を磨くのと同じような感覚になるはずです。1日5分か10分の努力で十分でしょう。それで英語が得意になるのなら、こんなに得な勉強法はないと思いませんか。
今の中学生と昔の中学生に共通していることは、教科書の英文を日本語に訳すことができると、それで一安心してしまうところです。例え、その日本語訳が自分でやったものではなくて、授業中の先生の言った訳を写したものだとしてもです。でも、子供たちは「翻訳」の勉強をしているわけではありません。確かに日本語の意味がつかめることも大切です。でも、それは自分の力でやらなければ意味がありません。だから、日本語訳は予習でやればいい。分からないところは、授業中に確認するのです。そして、家に帰って復習として徹底的に音読をする。英語は言葉です。言葉は口に出さなければ意味がありません。普段の生活の中で、英会話を実践する機会がほとんどない日本人にとって、自分で音読練習を反復することは、どれほど大切なことか知れないのです。(2013年12月23日)
10.文法(英語のルール)を理解したら、例文をたくさん覚えること
英語の文法が大切なことは前にも書きましたね。でも、前置詞とか動名詞など難しい文法用語にしばられていると、英語を自由に使いこなすことはできません。例えば、英語のルールの一つに「前置詞の後は名詞か動名詞」というものがあります。例えば、「あなたに再会するのを楽しみにしています」という英語を作ってみましょう。
1)I'm looking forward to see you again.
2)I'm looking forward to seeing you again.
文法からすると、2)が正解になります。理解できたら、できるだけたくさんの例文を練習して覚えることです。
3)I'm looking forward to watching the movie.
4)I'm looking forward to reading the book.
5)I'm looking forward to my birthday party.
6)I'm looking forward to my trip to Kyoto.
こんな風に、文法を理解しながら少しでも多くの例文を頭に入れていくのです。暗記という作業は大変なことのように見えますが、能というのは似たような作業をしているうちに、その作業をこなす力をどんどん高めていくものです。ですから、例文の暗記という作業も、決して大変ではなくなっていきます。日本で生活する限り、日常生活で英語を使う場面は少ないですね。ですから、こういう特別な努力が必要になってきます。
6.ディクテーションは最高に効果的な学習法
"dictation"という学習方法があります。これは時間はかかるかも知れませんが、非常に効果的な学習法です。よく、中学校の生徒たちからも「リスニングが苦手なんですが、何かいい学習法はありませんか?」と質問されることがあります。そういうとき、この"dictation"という方法を紹介するのですが、この方法を実行に移すためには英語のCDなりMD教材が必要なのです。ですから、中学生の場合は、年度当初に教科書の本文を外国人が録音したCD教材を販売しているので、それを購入しておくといいでしょう。だいたい3,000円くらいで購入できます。もっと安上がりなのはNHKの基礎英語のテキストです。音声はラジオから録音しておけばいいし、毎週やる必要もありません。
"dictation"のやり方は、至って簡単です。音声教材を何度も何度も聴き、聞き取れた部分をノートなどに書き取るだけ。もうこれ以上は聞き取れないと判断したところでストップして、テキストと見比べます。「何だこう言ってたのか」という発見がたくさんあって、非常に楽しい。こうして訓練を積み重ねるうちに、リスニングの力も鍛えられるというわけです。例えばこんな表現があります。
"Let's get out of here."(さっさとずらかろうぜ)
これはネイティブが発音すると、「レッツゲラウラヒア」に聞こえますから、最初に聴き取ろうとしたときは、恐らくお手上げでしょう。こうして、学習が進むと、今のアメリカ英語では"of"は「ア」としか発音されないことも分かってくるし、"t"の音も"l"か"d"の音に化けることも分かってきます。"dictation"で耳を鍛えることで、英語の表現もどんどん覚えることができるわけです。
英語学習の基本的な順番は「聴く」「話す」「読む」「書く」です。皮肉なことに、日本の英語学習は本来は最後に来るべき「読む」「書く」が最初に来ていることが分かりますね。だから、英語の学習を難しいと感じる人が多いわけです。"dictation"は一番基本の「聴く」力を鍛えてくれますから、英語の学習方法としても自然だと言うことができます。皆さんの中にもTOEIC(Test of English for International Communication)という試験があるのをご存じの方がいると思いますが、この990点満点のテストは、企業の採用条件にもなっているので、特にビジネスマンが多く受験します。また、最近では教員採用試験の優遇条件にもなっているので、英語の先生を目指す人たちには必須のテストです。僕は、英会話学校で講師をしていたときに、このTOEICのコースも担当していました。得点を上げるのはなかなか難しいテストですが、一番効果的な方法はリスニングを鍛えることなんです。リスニングの得点が上がるような勉強をすると、全体の得点も上がる。
"dictation"には時間がかかりすぎると不満をこぼす人もいると思います。そういう人には向かない勉強法なのでしょう。でも、じっくり粘り強く勉強することが好きな人にとっては、ちょうど子供たちがゲームに熱中するような感覚で、楽しくできる学習法です。同じリスニングを鍛える勉強法でも、ただ聞き流すだけの学習法とは違って、言葉を正確に覚えることができるところが優れている点です。興味深い音声教材が見つかれば、これほど楽しい勉強はありません。どうぞ、試してみて下さい。(2013年2月10日)
5.反復練習が全て
英語の諺に、"Practice makes perfect."(練習を続ければ上手にできるようになる)というのがあります。日本語では「習うより慣れろ」とか「継続は力なり」などと訳されていますが、英語の辞書で調べてみると、( )内の日本語のような解説がされています。いずれにしても、何度も何度も繰り返し練習することで、上手にできるようになるのは確かです。
僕は、中学1年生の時に体操部に所属していました。家に帰ると毎晩布団の上でバク転やバク宙の練習をしました。早く上手にできるようになりたかったので、もう夢中で練習したものです。今思えば、よく怪我をしなかったと思います。そして、やがて補助付きでバク転ができるようになり、次には補助なしでバク転ができるようになりました。何度も何度も練習して、あの華麗な技は身につくのです。それでも、毎日練習を続けていなければ、技の切れは落ちてしまいます。現に、体育祭の出し物で体操部が演技することになったのですが、その練習中に僕はバク転の踏み切りを失敗して、首から落ちてしまいました。それ以来、後方にジャンプして回転することはできなくなりました。恐怖心からです。それでも、さらに練習を積み重ねていれば、その恐怖心も乗り越えることができたでしょう。残念ながら、僕は1年生が終わるときに、体操部を辞めてしまいました。何でも夢中になって努力する割には、飽きるのも早かった僕です。「継続は力なり」という諺が最もふさわしくなかった子供だったと思います。
でも、英語に関しては人一倍努力を重ね、中学生の頃から現在に至るまで、練習が続いています。人間、一つぐらい取り柄があるものです。とにかく英語の学習に関しては「反復練習」がものを言います。最近の中学生たちに一番欠如しているのは、この「反復練習」なんです。新しい文法とそれを使った英文を学習しても、「わかった」で終わってしまって、その後の「反復練習」がないから身につかない。人間の赤ちゃんが言葉を覚えるときには、常に「反復練習」をしていることに気付くでしょう。言葉を自然に学習する能力が備わっている赤ちゃんですら「反復練習」を大切にしている。それなのに、自然に言葉を学習する能力がなくなる年頃の中学生たちが、「反復練習」をやらなかったらどうなるか、想像に難くありませんね。日本人が、何年英語を勉強しても上手に英語を話せるようにならない理由がここにあります。
「スピード・ラーニング」という英会話教材が、自信を持って宣伝しているのは、あの教材の基本に「反復練習」という発想があるからです。何度も繰り返してCDを聴いているうちに、自然に英語が身につくという宣伝です。英文法の学習などなくしても「自然に身につく」という部分に関しては簡単に信用するわけにはいきませんが、「何度も繰り返して」の部分には大いに賛成です。
「この教室の中で英語が話せるのは私だけです」という日本語を英語に訳すとどうなると思いますか。多分、多くの日本人はこう言うでしょう。
"Only I can speak English in this classroom."
でも、実際に外国人が言う英語は、これではありません。彼らは次のように言うのです。
"I'm the only person in this classroom who can speak English."
別に正解しなかったからと言って、落ち込む必要はありません。僕だって以前は知らなかった。だから、そうなのかと理解できた時点で、正しい英語を何度何度も繰り返して言う練習をすればいいのです。そうすれば、次からは正しい英語が口をついて出てくるようになります。日本にいながらにして、少しでも自然な英語を話すことができるようになりたければ、「反復練習」の大切さを知ることです。(2013年2月9日)
3.英作文は自分の知っている英語を使って
よく生徒から「英作文のやりかたがわからないのですが」という質問を受けます。生徒たちが戸惑うのも同然のことで、英語の文章を書くという作業は日本人の誰もが苦手とする分野です。まず、英文を作るときに知っていなければならないのは、日本語をそのまま英語に直すということはほとんど不可能だということです。例えば、「もう、数学には参るよ」という日本語を英語にするとしましょう。そのとき、日本語にこだわってしまうと、「もう」は英語で何と言うか、「参る」は何と言うかと、そこで行き詰まってしまいます。この場合、「もう」は無視して、「数学には参る」という日本語を英語に直しやすいようにすることが大切です。そこで登場するのが「数学は自分を困らせる」「数学は自分を死んだも同然にする」というような拡大した解釈です。最終的には"Math really kills me."という英語になる。"really"(本当に)という単語を使うことで、「もう」という言葉のニュアンスも表現できるでしょう。「数学は自分を殺してしまう」というのは日本語にはない発想です。だから、英作文は難しい。
高校時代の英語の先生が言っていました。日本人のするべきことは「英作文」ではなくて「英借文(えいしゃくぶん)」だと。知っている英語を真似して、それを借りて英文を作るという意味です。日本語をそのまま英語に直そうとするのではなく、それまでに暗記した基本文を真似して近い意味の英語に直すことが、英作文のコツなんです。そのためには、できるだけたくさんの英文を頭に入れておく必要があります。頭にインプットされた英語の量が多くなればなるほど、表現力も高まるという理屈です。
僕の場合は、学生時代からものすごい量の英語を暗記することに勤めてきたので、外国暮らしの経験はありませんが、英作文は得意です。第1回のTOEIC Speaking & Writing Testでも、満点を取ることができました。日本語の文章を書くのと同じくらいの速さで、英語の文章を書くことができる。僕の場合は「書く力」が先に上達して、それを土台にして「話す力」が上達したので、恥ずかしながらSpeakingでは満点を取ることができませんでした。本来は「話す力」が上達して「書く力」につながるのが自然だと思います。でも、こればかりは仕方ありません。外国暮らしをしたこともないし、外国人の先生と出会ったのも遅かったからです。だから、ここに書いているアドバイスは、僕のように外国で生活する経験や外国人講師から英語を教わる経験が少ない人のための、英作文上達法だと思って下さい。
僕は、中学校の生徒たちには、教科書とは別に「暗記用基本文」を作って配布しています。生徒たちは、暗記できた文を僕の前で言うことができればかわいいスタンプを押してもらえる。面白いことに、暗記する作業を進めるに連れて、暗記の速度も増してくるようです。暗記することが楽しくなった生徒たちは、新しいプリントが配られるのを楽しみにしているという状況です。でも、できれば自然な英語をたくさん覚えてもらいたいのです。そのために安価で効果的な教材が、NHKの「ラジオ基礎英語1・2・3」や「ラジオ英会話」のようなテキストです。中学校で使われている教科書などとは違って、内容も工夫されているし、英語も自然で興味深い表現をたくさん学ぶことができます。しかも、安い!ラジオを聴く時間がなかなかない人のために、毎月分をまとめたCDも販売されています。僕は、大学生の時にECCに所属していたことがあって、そこでは毎朝「ラジオ英会話」の会話文を暗記することが義務づけられていました。今思うと、あの訓練は僕の英会話上達のためにものすごく役立ったのではないでしょうか。それは、もちろん英作文の力をも向上させてくれたことでしょう。
「英作文」が先か、「英会話」が先かという問題が残るかも知れませんが、どちらも平行して学習することが大切だと思います。でも、前述したように、自然な流れとしては「英会話」が先で、その延長線上に「英作文」がある。ただ、普段の生活で英語を話す外国人と接する機会があまり多くない日本人にとって、短期間に「英会話」をマスターするのは難しいことですから、僕のように「英作文」と「英会話」を同時に学習することも必要なのだと思います。今の時代は優れた英会話教材もたくさん売られています。ただ、そのような教材を使って自分一人で学習を継続することは思っているほど楽ではないでしょう。また、費用も馬鹿にはなりません。だとしたら、まずは安価なラジオ講座やテレビ講座から始めてみてはどうでしょうか。こちらも継続するのは大変ですが、語学学習に関してはまさに「継続は力なり」なのです。(2013年1月12日)
1.中学校で使っている教科書は使い方次第
「中学校の教科書は間違いだらけだ」とか「中学校の教科書では力はつかない」などと言う人も少なくありませんが、本当にそうなのでしょうか。英語学習にとって、教材選びはとても大切です。でも、どんなに素晴らしい教材を手にしたとしても、それを使う方法に工夫がなければ大きな成果はあがらないでしょう。
中学校で英語を教えていて強く感じるのは、本文がすらすら読めない生徒が多いことです。国語でも音読は大切にしていますが、なぜ外国語である英語で音読が軽視されているのでしょう。あまりよく意味がわからなくても、すらすら読めるまで練習することが、英語学習にとっては非常に大切。確かに1クラス40人の学級では、音読練習はしにくいかも知れませんね。僕が勤務している中学校では、3年生の英語の授業だけクラスを半分に分けた少人数制授業なので、比較的音読練習に多くの時間を割くことができます。それでも、家で練習してくれないとねえ。
僕は中学校1年生の時は英語があまり得意ではありませんでした。それを英語好きに変えてくれたのが、中学1年の夏に出会った塾の先生でした。その先生はもともと高校で数学を教えていたのだそうですが、英語の指導も大変上手で、教科書は徹底的に音読させ、その上暗唱させたのです。先生の前に行って、暗記した教科書の本文をすらすら言う。その繰り返しは、僕の英語学習の基礎を作ってくれました。僕は、その先生の指導方針を今でも受け継いでいます。自分自身も、出会った教材はできるだけ暗唱するように努めてきました。その効果は甚大で、僕は海外留学経験がないにもかかわらず、また外国人との接触がきわめて少なかったにもかかわらず、大学の外国語学部に在籍している間に、英語はほとんどぺらぺらになってしまいました。全ては「音読」と「暗唱」のおかげです。
「教科書はちっとも面白くないから」と言い訳をする人もいますが、実際には教科書の内容を掘り下げていないだけ。例えば、僕が学校で使っている教科書にはユダヤ人を救った「杉原千畝(ちうね)」という外交官の物語が載っているのですが、それを文字面だけ追っていたのは決して面白くないかも知れません。深刻な内容ですから、歴史に興味のない子にとっては難しい。でも、彼が最初に勤務したリトアニアのカウナスという都市は、どんな場所だったのか、図書館の本やインターネットを駆使して調べてみれば、授業で先生が話してくれなかったようなことも知ることができて、少しずつ興味が持てるようになるかも知れません。杉原氏はヒトラーの弾圧に抗して出国を願う多くのユダヤ人たちにビザを発行したのですが、ビザとはいったいどんなもので、現代ではどのような形でどんな場合に発行されるのか調べてみるのもいいでしょう。いずれにしても、教科書の本文を掘り下げて音読練習を繰り返せば、それはもはや単調な作業ではなくなるはずです。
年度当初に教科書の本文を録音したCDの販売がありますが、もし家庭に経済的な余裕があれば、そんな補助教材も効果大でしょう。単語が読めなかったり、文のリズムがよくわからなかったら、先生に質問すれば済むことです。学校の先生はいくら使ってもタダですよ。
音読をしていると、英語のリズムも身につき、英語の暗唱も楽になります。例えば次の文を読んでみて下さい。
"It's a piece of cake."最初は「イッツアピースオヴケイク」と読むでしょうが、先生からアドバイスを受けて練習を重ねるうちに、まるでネイティブ・スピーカーのように「イッツァピーサケイ」と発音できるようになる。「それは一切れのケーキを食べるのと同じくらい簡単だ」つまりこなれた日本語にすれば「超簡単だよ」という意味なんですよ。意味がわかると一層暗唱はたやすくなりますね。ちょとしたやり方の工夫で、英語学習はどんどん楽しくなるんです。(2013年1月6日)
2.文法をおろそかにしてはいけません
僕は中学校教師を辞めてからの4年間で2つの英会話学校の講師を務めました。片方は大手で、もう片方は中堅。印象的だったのは、テレビのコマーシャルでも有名な大手の英会話学校では、英文法教育にものすごく重きを置いていたことです。文法の力なくして、英会話は身につかないというのが学校の方針でした。そして、それは僕たちバイリンガル英会話講師(とその学校では呼ばれていた)に大きなプレッシャーとしてのしかかります。二つの理由からです。一つは僕のように学校で英語の教師をしていた人間ならまだしも、一般企業で働いている人や海外在住経験がある人などは、英文法に関する知識があまり深くなかったこと。そして二つ目は、授業は全て英語で行うから、当然のことながら文法の説明も英語で行わなければならなかったことです。ただ、生徒さんたちからすれば、あまり文法的な説明ばかりされると嫌気がさしてしまうようでした。「何だか中学校で授業を受けてるみたいだなあ」なんて、皮肉を言われたこともありました。
英文法が苦手な人は少なくありませんね。たぶん中学時代や高校時代の授業がトラウマになっているのでしょう。僕が学生の頃は五文型の授業が主流でした。でも、そのうち5つの文型には分類できない英文が存在すると指摘されるようになって、五文型はの授業はその座を奪われていきました。そして、時代は文法軽視の時代へと移行する。皮肉ですが、英語学習の基本は文法にあると主張し続けてきたのは、英会話学校でした。一般の学校では文法にこだわることは、コミュニケーションの手段としての英語学習の邪魔になると考えられました。だから日本人はいつまでたっても「オウム返し」しかできない。自分で英文を作ることができないんですね。文法に沿って作った文が、実際にネイティブ・スピーカーたちに使われるかどうかは、また別の問題です。最初は、簡単な文でいいから自分で作ることが大切。
ただ、ここで誤解されては困るのは、英文法というのは「文の作り方を理屈で覚えること」とは違うということです。特に英語学習では「習うより慣れろ」と言われますね。それは、言い換えれば「理屈で覚えようとするのではなく、繰り返し練習することで身につけろ」ということなんです。例えば、中学生が理解に苦労する文法に「不定詞」の「形容詞的用法」というのがあります。次に例文を挙げましょう。
"Please give me something to eat."(何か食べるものをください)
"I have a lot of things to do tonight."(今夜はやらなければならないことが山ほどある)
"I have something to show you."(ちょっと君に見せたいものがあるんだ)
"Anythinig to say?"(何か言いたいことは?)
もちろん理屈も大事ですから、赤い部分が三拍子になっていること。"to+動詞の原形"が不定詞で、これらの文では不定詞が前の名詞を説明している形になっているということ。そのくらいの説明を理解してから、何度も何度も音読する練習をします。そして暗記してしまう。このようにして身につくものが文法だと思います。基本的なことが身についてしまえば、この応用も理解できるようになります。
"We have only three minutes to go."(あと3分しかないぞ)
この文は四拍子に聞こえますが、"three minutes"を一語だと考えれば、三拍子の法則に合いますね。
いきなり難しい話になってしまいましたが、こういう知識を少しずつ身につけながら、基本的には音読と暗唱を続けていきます。そうすれば、わざわざ外国暮らしをしなくても、英語が話せるようになるわけです。こういう話を知っていますか。「日本人は中学から大学まで10年間も英語の勉強をしていながら、まともな英語が話せないんだってさ」と世界では陰口をたたかれているっということを。それは日本人がアホなのではなく英語の勉強方法に誤りがあるからなんですよね。東南アジアの国々では2年から3年も英語を勉強した子供たちは、英語がしゃべれるようになっていくそうです。もちろん、文法に合ったきれいな英語ではないかも知れませんが。
日本の英語教育も、しっかりした英文法の土台の上に英会話や英作文の訓練をする方向に変わっていけば、すぐに国際舞台で活躍できる人材を多く排出できるようになるでしょう。英会話に自信がつけば、海外旅行も楽しくなりますしね。(2013年1月6日)
2013年1月6日掲載開始
海外留学の経験者も増え、いわゆる「バイリンガル」と呼ばれる人たちも多くなった現在も、英語学習熱は冷えることがありません。ところが、効果的な学習方法に出会うことは大変難しい。英会話学校に通えば楽しく英語を学ぶことができますが、それには多額の費用がかかりますし、実際それだけで英語がペラペラになるということもないでしょう。英語を使いこなすためには、しっかりした英文法の学習も必要ですし、粘り強い練習の積み重ねも大切です。
僕自身は海外留学の経験もありませんし、大学生になるまでネイティブ・スピーカーに英語を教わったこともありません。ただ、効果的な学習方法は中学生の頃に恩師から授かりましたし、また普通の人が決してやらないような学習法も実行してきました。「学習法」というと堅苦しく聞こえるかも知れませんが、要は粘り強く続けることだけが英語上達の近道なんだと思います。ここでは、塾講師・中学校教師・英会話学校講師という経験から得た知識をもとに、思いつくままに効果的な学習法を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。何かご意見・ご質問等がありましたら、上の掲示板に書き込んで下さい。